県域放送

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県域放送(けんいきほうそう)は、日本に於ける放送の区分の一つである。

概説[編集]

放送法施行規則(昭和25年電波監理委員会規則第10号)別表第一号(注)十三において「都道府県の区域又はの各区域を併せた区域における需要にこたえるための放送」と定義している。この定義により、いわゆる都域放送、道域放送、府域放送及び府県域放送も県域放送となる。

地上系による放送のうち、中波放送超短波放送及びテレビジョン放送で行われている(短波放送は全国(日本全国)を放送対象地域とする放送のみであり県域放送は行われていない)。

県域放送が生まれた理由[編集]

  • テレビ放送開始初期、全国展開を目指していた日本テレビが進出することで系列の読売新聞も進出しシェアを奪われることを恐れた地方新聞が対抗策として自らの営業区域である県域での放送局設置に熱心だったため。
  • 田中角栄の「一県一波政策」により、県ごとにテレビ周波数が割り当てられたため。
  • 郵政省総務省による「マスメディア集中排除原則」の存在。

県域放送の是非[編集]

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現状維持・規制強化の立場から[編集]

(以前の総務省や民放側は)

  • 県域放送は地域に密着した放送をするのに必要不可欠である。
  • 首都圏の情報がそのまま地方の人に伝わる事によって、東京一極集中過疎化を悪化しかねない。

 等と主張

規制緩和の立場・その他から[編集]

  • 放送法によって放送対象地域が定められているが、電波の性質上、都道府県ごとに電波を区切ることは事実上不可能である(これは広域放送外国語放送についても同様である)。ただし、電波が届く範囲には一定の限界が存在する(超短波放送の場合、スポラディックE層が発生した時は電波が広範囲に届く)。
  • 県域放送はもともと当時の地方新聞の利益のためにできたものだと指摘されている。
  • 放送対象地域が狭く、かつマスコミの集中排除原則によって資本構成が規制されているため、資本が過小であり経営基盤が脆弱である[1]。地域によっては資本が集まらないため開局できず、結果として情報格差が発生している。
  • 放送対象地域が狭いため広告収入も限られ、キー局からの「ネット料」と呼ばれる補助金で赤字を補填している局が多い[1]
  • (必ずしも県域放送のみの問題点ではないが)そもそも各地域にて、受信できる民放数に違いがあることに大きな問題がある。民放の多い地域と少ない地域の間には情報格差が起こっていて、例えば、サッカーワールドカップ予選やプロ野球日本シリーズなどのスポーツビッグイベントを放送系列の関係で見ることが出来ない地域があるという問題も生じており、この問題は地方紙でもしばしば取り上げられ、地方に住んでいる者がキー局のローカル枠を見たいという要望がかなり有り、放送対象地域以外の人にキー局又はその地域の放送局を視聴させないようにする事は、地域格差、情報の受け手側による取捨選択、地域間の不公平が有り本来、国は民意に沿った対応が必要とされる。
  • (必ずしも県域放送のみの問題点ではないが)民放が5局揃っている地方でも在京局の番組がすべて放送されるわけではなく、(特に深夜アニメ)にかなり差が有る)放送されたとしても遅れネットの場合もありうる。しかし、地方局が必ずしも在京局の放送番組を放送しなければならないわけではなく(ネットワークセールス枠の番組を除く)、また、必ずしもネットワークに加盟しなければならないわけでもなく(「独立放送局」の項目を参照)、また、必ずしも番組販売により放送番組を放送しなければならないわけではない。
  • (必ずしも県域放送のみの問題点ではないが)放送事業者によって主張や報道の仕方やニュースの時間、その他にも地震災害などの際の臨時ニュースへの対応等も異なるので、災害の際にも重要になってくる。ただし、情報を得る手段が放送のみであるというわけではないという点にも注意を要する。
  • 論調が県中心主義になりがちである。また、県が特定の一般放送事業者を支配する例もみられる(「#県が一般放送事業者を支配する例」も参照)。
  • (必ずしも県域放送のみの問題点ではないが)昔に比べ自動車、電車、新幹線、飛行機等の交通網が発達し短い時間で遠くまで移動できるうえ、インターネットや携帯電話、音楽プレーヤーで動画や画像を世界中の人に送ったり持ち運べるなど、情報化社会が加速する中現行法そのものが時代の流れに合っていない点。
  • (必ずしも県域放送のみの問題点ではないが)民放が少ない地域では少数の意見に左右される可能性があり、上記と同じくマスメディア集中排除原則本来の意思に反している点。
  • (県域放送のみの問題点ではないが)日本のような民主主義の国において国民・地元住民の意見を重視せずに、本来特定の意思に左右されないはずの放送がこのような新聞社やテレビ局等の都合に左右されていること自体重大な問題であるうえ、この現状がマスメディア集中排除原則本来の意思からかけ離れている点。
  • (県域放送のみの問題点ではないが)県境周辺に住んでいる場合や出張等仕事の都合や用事等で他地域に行く、またはよく行く場合、その地域または自分の住んでいる地域の放送局を見たくても、現行の制度では自分のいる地域の放送局しか見られないことになる。
  • 近年では若者を中心としたテレビ離れや過疎化などで地方テレビ局の経営が悪化し、再編論が浮上している。そのため、現状維持の立場だった総務省がテレビ局再編論者の鈴木茂樹が事務次官に就いて以降テレビ局再編の議論が活発化し、総務省は規制緩和の立場に回っている。

県域放送の一覧[編集]

日本放送協会[編集]

日本放送協会(NHK)の放送のうち、放送対象地域が全国(日本全国)である教育放送を除く放送の県域放送の実施状況は次表の通りである。

放送対象地域 放送局 AM FM TV
北海道[2] 札幌
函館
旭川
帯広
釧路
北見
室蘭
東北ブロック
青森県 青森
岩手県 盛岡
宮城県 仙台
秋田県 秋田
山形県 山形
福島県 福島
関東・甲信越ブロック
茨城県 水戸 ×[3] [4]
栃木県 宇都宮 ×[3] [5][4][6]
群馬県 前橋 ×[3] [5][4][6]
埼玉県 さいたま ×[3] ×[5][4]
千葉県 千葉 ×[3] ×[5][4]
東京都 首都圏センター ×[3] ×[5][4]
神奈川県 横浜 ×[3] ×[5][4]
新潟県 新潟
長野県 長野
山梨県 甲府
東海北陸ブロック
富山県 富山
石川県 金沢
福井県 福井
岐阜県 岐阜 ×[7]
静岡県 静岡
愛知県 名古屋 ×[7]
三重県 ×[7]
関西ブロック
滋賀県 大津 [8]
京都府 京都
大阪府 大阪 ×[9]
兵庫県 神戸 ×[9]
奈良県 奈良 ×[9]
和歌山県 和歌山 ×[9]
中国ブロック
鳥取県 鳥取
島根県 松江
岡山県 岡山
広島県 広島
山口県 山口
四国ブロック
徳島県 徳島
香川県 高松
愛媛県 松山
高知県 高知
九州沖縄ブロック
福岡県[10] 福岡
北九州
佐賀県 佐賀
長崎県 長崎
熊本県 熊本
大分県 大分
宮崎県 宮崎
鹿児島県 鹿児島 [11]
沖縄県 沖縄 [11] [12][13]

一般放送事業者[編集]

ラジオ放送[編集]

現在、県域放送では同一都道府県内において同一周波数帯を利用した放送局は2局までであり、3局以上の例は無い。

放送対象地域 中波1 中波2 超短波1 超短波2
北海道 北海道放送 STVラジオ エフエム北海道 エフエム・ノースウェーブ
青森県 青森放送 エフエム青森
岩手県 アイビーシー岩手放送 エフエム岩手
宮城県 東北放送 エフエム仙台
秋田県 秋田放送 エフエム秋田
山形県 山形放送 エフエム山形
福島県 ラジオ福島 エフエム福島
茨城県 茨城放送
栃木県 栃木放送 エフエム栃木
群馬県 エフエム群馬
埼玉県 エフエムナックファイブ
千葉県 ベイエフエム
東京都 エフエム東京 J-WAVE
神奈川県 アール・エフ・ラジオ日本 横浜エフエム放送
新潟県 新潟放送 エフエムラジオ新潟 新潟県民エフエム放送
富山県 北日本放送[11] 富山エフエム放送
石川県 北陸放送 エフエム石川
福井県 福井放送 福井エフエム放送
山梨県 山梨放送 エフエム富士
長野県 信越放送 長野エフエム放送
岐阜県 岐阜放送 岐阜エフエム放送
静岡県 静岡放送 静岡エフエム放送
愛知県 エフエム愛知 ZIP-FM
三重県 三重エフエム放送
滋賀県 京都放送[14] エフエム滋賀
京都府 エフエム京都
大阪府 エフエム大阪 FM802
兵庫県 ラジオ関西 Kiss-FM KOBE
奈良県 (なし) (なし)[15]
和歌山県 和歌山放送 [16]
鳥取県[14] 山陰放送 エフエム山陰
島根県[14]
岡山県 山陽放送 岡山エフエム放送
広島県 中国放送 広島エフエム放送
山口県 山口放送 エフエム山口
徳島県 四国放送 エフエム徳島
香川県 西日本放送 エフエム香川
愛媛県 南海放送 エフエム愛媛
高知県 高知放送 エフエム高知
福岡県 アール・ケー・ビー毎日放送 九州朝日放送 エフエム福岡 CROSS FM
佐賀県 長崎放送[14] エフエム佐賀
長崎県 エフエム長崎
熊本県 熊本放送 エフエム熊本
大分県 大分放送 エフエム大分
宮崎県 宮崎放送 エフエム宮崎
鹿児島県 南日本放送 エフエム鹿児島
沖縄県 琉球放送[11] ラジオ沖縄[11] エフエム沖縄

テレビジョン放送[編集]

配列についてはデジタル放送におけるリモコンキーIDの順に因った。

放送対象地域 1 2 3 4 5
北海道 北海道放送 札幌テレビ放送 北海道テレビ放送 テレビ北海道 北海道文化放送
青森県 青森放送 青森朝日放送 青森テレビ
岩手県 テレビ岩手 岩手朝日テレビ アイビーシー岩手放送 岩手めんこいテレビ
宮城県 東北放送 宮城テレビ放送 東日本放送 仙台放送
秋田県 秋田放送 秋田朝日放送 秋田テレビ
山形県 山形放送 山形テレビ テレビユー山形 さくらんぼテレビジョン
福島県 福島中央テレビ 福島放送 テレビユー福島 福島テレビ
茨城県 (なし) 関東広域圏のため県域局は各都県1局のみ)
栃木県 とちぎテレビ
群馬県 群馬テレビ
埼玉県 テレビ埼玉
千葉県 千葉テレビ放送
東京都 東京メトロポリタンテレビジョン
神奈川県 テレビ神奈川
新潟県 テレビ新潟放送網 新潟テレビ二十一 新潟放送 新潟総合テレビ
富山県 北日本放送 チューリップテレビ 富山テレビ放送
石川県 テレビ金沢 北陸朝日放送 北陸放送 石川テレビ放送
福井県 福井放送 福井テレビジョン放送
山梨県 山梨放送 テレビ山梨
長野県 テレビ信州 長野朝日放送 信越放送 長野放送
静岡県 静岡第一テレビ 静岡朝日テレビ 静岡放送 テレビ静岡
岐阜県 岐阜放送 中京広域圏のため県域局は各県1局のみ)
愛知県 テレビ愛知
三重県 三重テレビ放送
滋賀県 びわ湖放送 近畿広域圏のため県域局は各府県1局のみ)
京都府 京都放送
大阪府 テレビ大阪
兵庫県 サンテレビジョン
奈良県 奈良テレビ放送
和歌山県 テレビ和歌山
鳥取県[14] 日本海テレビジョン放送 山陰放送 山陰中央テレビジョン放送
島根県[14]
広島県 中国放送 広島テレビ放送 広島ホームテレビ テレビ新広島
山口県 テレビ山口 山口放送 山口朝日放送
岡山県[14] 西日本放送 瀬戸内海放送 山陽放送 テレビせとうち 岡山放送
香川県[14]
徳島県 四国放送 (実質近畿広域圏の隣接地域扱い)
愛媛県 南海放送 愛媛朝日テレビ あいテレビ テレビ愛媛
高知県 高知放送 テレビ高知 高知さんさんテレビ
福岡県 九州朝日放送 アール・ケー・ビー毎日放送 福岡放送 ティー・ヴィー・キュー九州放送 テレビ西日本
佐賀県 サガテレビ (実質福岡県の隣接地域扱い)
長崎県 長崎放送 長崎国際テレビ 長崎文化放送 テレビ長崎
熊本県 熊本放送 熊本県民テレビ 熊本朝日放送 テレビ熊本
大分県 大分放送 テレビ大分 大分朝日放送
宮崎県 テレビ宮崎 宮崎放送
鹿児島県 南日本放送 鹿児島讀賣テレビ 鹿児島放送 鹿児島テレビ放送
沖縄県[17] 琉球放送 琉球朝日放送 沖縄テレビ放送

一般放送事業者の県域放送が存在しない都府県[編集]

ラジオ放送
[編集]

  • 奈良県
    • ただし、近畿広域圏を放送対象地域とする広域放送のラジオ放送が存在する。[15]

テレビジョン放送
[編集]

  • 茨城県
    • ただし、関東広域圏(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の各区域を併せた区域)を放送対象地域とする広域放送のテレビジョン放送が存在する。

県が一般放送事業者を支配する例[編集]

放送局に係る表現の自由享有基準(平成20年総務省令第29号)において「支配」に当たる10分の1を超える議決権を有する者として総務省ウェブサイト[18]に公表されているもののうち、県及び県に支配される一般放送事業者は次の通りである。

  • 山形県 - 山形放送(14.38%)
  • 福島県 - 福島テレビ(50%)、ラジオ福島(12.5%)
  • 茨城県 - 茨城放送(19.9%)
  • 栃木県 - とちぎテレビ(20%)、栃木放送(30%)
  • 群馬県 - 群馬テレビ(15.06%)
  • 千葉県 - 千葉テレビ放送(16.8%)
  • 滋賀県 - びわ湖放送(19.65%)
  • 兵庫県 - サンテレビジョン(18.6%)
  • 奈良県 - 奈良テレビ放送(15%)
  • 和歌山県 - テレビ和歌山(14.93%)
  • 大分県 - 大分放送(12.3%)

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 池田信夫『電波利権』 新潮社〈新潮新書〉、2006年、46-47頁。
  2. NHKは民放と異なり、北海道を「都道府県」ではなく「地方ブロック」扱いしている。このため、道内を7地域に分割して放送。
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 NHKの中波放送(総合放送)のうち、関東広域圏は東京を親局とする広域放送の放送対象地域であり、県域放送を行っていない。
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 NHKのテレビジョン放送(総合放送)のうち、アナログ放送における関東広域圏は、東京を親局とする広域放送の放送対象地域であり、県域放送を行っていない。
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 NHKのテレビジョン放送(総合放送)のうち、デジタル放送における関東広域圏(茨城県を除く)は東京を親局とする広域放送の放送対象地域であり、県域放送を行っていない。
  6. 6.0 6.1 2009年度から向こう3年間の経営計画においてデジタル転換完了後に県域放送を実施するための検討に入ることが明記された。県内基幹局の出力は既に県域放送実現を見越して設定されている。
  7. 7.0 7.1 7.2 NHKの中波放送(総合放送)のうち、中京広域圏は名古屋を親局とする広域放送の放送対象地域であり、県域放送を行っていない。
  8. 運用上は大阪の中継局扱いであるが、県内唯一の送信所である彦根中継局に大津局のコールサインが割り当てられており、県域ローカルのニュースなどが放送されている。
  9. 9.0 9.1 9.2 9.3 NHKの中波放送(総合放送)のうち、大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県は大阪を親局とする広域放送の放送対象地域であり、県域放送を行っていない。
  10. 福岡県は民放と異なり県域放送ではなく、福岡県を2地域に分割して放送。北九州局のエリアには将来の「関門海峡域特別市」構想もにらみ、山口県下関市も事実上含まれている。
  11. 11.0 11.1 11.2 11.3 11.4 超短波を使用する中継局が存在する。
  12. NHKのテレビジョン放送(総合放送)におけるアナログ放送の中継局のうち、南大東は、放送用周波数使用計画(昭和63年郵政省告示第661号)において「放送衛星局を親局とすることができる」と規定し、沖縄を親局とする総合テレビジョンでなく衛星第1テレビジョンを放送している。
  13. NHKのテレビジョン放送(総合放送)におけるアナログ放送の中継局のうち、南大東及び北大東は沖縄でなく東京を親局とする総合テレビジョンを放送している。
  14. 14.0 14.1 14.2 14.3 14.4 14.5 14.6 14.7 より厳密に分類した場合には「準広域放送」の扱いとなる。
  15. 15.0 15.1 放送用周波数使用計画に於いて、親局の周波数85.8MHz空中線電力0.5kWが定められている。
  16. 放送用周波数使用計画に於いて、親局の周波数77.2MHz・空中線電力0.5kWが定められている。
  17. 一般放送事業者のテレビジョン放送に於けるアナログ放送の中継局のうち、南大東及び北大東はTBSテレビフジテレビジョン及びテレビ朝日が開設している。
  18. [1]

関連項目[編集]

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